<

吹き溜まりラジオ

世の中・世間様についてポンコツ3人が持論を展開するラジオ番組です【毎週月曜日22:00に配信予定】

つまらない登下校での楽しみ

 片道2.5kmの道のりをランドセルを背負って歩きながら何をしていたんだろう。東の山と西の海に挟まれた地形のせいか、「行きは灰色、帰りは茜色」としか記憶していないが、微かな記憶の中に稀に銀色の妖艶とも言うべき記憶が点在する。


 つまらない登下校での楽しみは、空き缶だけだった。空き缶を倒して腹の所を踏むと、腹は潰れ頭と尻の硬いところが内側に食い込み、足に固定される。カチャンカチャンと鳴らしながら歩いていると、一色しかない道に銀色に光り輝く足跡がつくように思えた。その頃の私は、缶を見つけると大いに興奮し、足に缶をはめることこそが生きがいだと言っても過言ではなかった。


 しかし、空き缶が落ちていることなどそう多くない。しかも、それがコーヒーのスチール缶だった場合は尚更気持ちが萎える。スチール缶は硬すぎて上手くはまらないのだ。私はその反抗的な態度に激しく憤り、即ゴミ箱送りにしてやっていた。
私が6年間の登下校で学んだことは、「アルミは柔らかくスチールは硬い」ということだった。

 これを無駄だという人もいるだろうが、私はそうは思わない。現に今、切れたギターの弦の素材が何なのかを考えていて、「弦なんて切れやすいんだから、どうせアルミだ」という多方当たっているであろう予想が出来ているのだ。


 弦のパッケージを見てみるとそこにはデカデカとnickelと書かれていた。ニッケルとは、原子番号28の金属元素で、元素記号はNiである。困った。これではオチがつかないではないか。全く…世の中ままならないことばかりで嫌になる。